1995年に発表された『クレイジーケンの世界』をリマスタリングし、98年に改めて発売された横山剣のソロアルバム。廣石恵一、小野瀬雅生といった後のクレイジーケンバンド(以下CKB)の主要メンバーが顔をそろえ、音づくりの面でさまざまな貢献をしている。
横山剣、並びにCKBが他の凡百のアーティストと決定的に違う点の1つとして、ロック、ソウル、ファンク、ヒップホップなどの「洋楽」と「歌謡曲」とを等価に扱うことができる点が挙げられるだろう。洋楽を真似しようとして結局中途半端な歌謡ポップスに堕してしまうのではなく、歌謡曲に洋楽と同じように価値のあることを見出し、意識的に歌謡曲テイストなサウンドづくりをしているのだ。これは大滝詠一や山下達郎、小西康陽など一部の優れたサウンド・クリエイターにのみできる、かなり高度な技。本作は、ヒップホップ色が濃厚な、ソフトロック風のなど、後のCKB名義の作品群に比べて、同時代のクラブミュージックを意識したサウンドメイクが目立つ1枚。中でも、70年代ディスコサウンド+90年代クラブサウンド+歌謡曲といった趣のは出色のカッコよさ。「東洋一のサウンドクリエイター」横山剣の面目躍如といったところだ。
ピチカート・ファイヴ方面からCKBのことを知った人に、最初に買うアルバムとしておすすめしたい1枚。(今井直也)