好意を寄せ合う高校生・拓也と紗月だが、拓也が彼女にフェチ的な欲望を抱いたことが発覚し、その関係はSM的なニュアンスを漂わせていく。
喜國雅彦の原作を映画化した塩田明彦の監督デビュー作。従来のバージョンでは、拓也の性的嗜好を嫌悪する紗月が、次第に「お前は私の犬」と言い放つほどの加虐性を身につけていくよう描かれていたが、ディレクターズカット版での紗月は、拓也との異常な関係に悩むが姉に「あなたが本当に好きなのは拓也くんだけ」と指摘されるシーンが追加されている。これによって紗月の気持ちが揺れ動きながらも、なお拓也に惹かれていることを自覚する過程が明確になった。『月光の囁き』は一見SM的な物語だが、感情と欲望のアンバランスに戸惑いながらも、なお相手を思ってやまない少年と少女を描いた、純粋恋愛映画なのである。(斉藤守彦)