『色っぽい・・でも相手は犬』
タイトルに犬が入っているので読んでみた。さほど期待していなかっただけに得した気分だ。
主人公柊真一郎はカメラマン。離婚して家も子供も失った彼は仕事場のスタジオで愛犬のハナコとふたり暮らし。5編が収録されているが、どの作品にも幻想的な夢とうつつの世界が広がっている。間違い電話から始まったある家族の物語「函館」。アマゾンのジャングルを舞台に展開する「アマゾナス劇場」。切なくて泣けてくる「ニュージーランド沖に落下」。親子二代の情愛と絆を描いたこれまた泣ける「地下鉄六本木駅一番線ホーム」。どれもいい。
そしてそのあいまあいまにハナコと交わされる会話のなにやらなまめかしいこと。「ヒイラギさん、ヒイラギさん、いまなにか他のこと考えていたでしょう・・」なんて犬に言われた日には、人間の女なんて興味がなくなるかもしれない。やきもちやきで好奇心旺盛、孤独な中年男にそっと寄り添うハナコもまた、夢か幻かも・・。