まだまだ未発達の分野ではあるが、パラジウム化学は、あっという間に有機合成化学に携わる全ての人々にとって欠くべからざる分野となった。複素環化合物は医薬産業において最重要のものであり、パラジウム化学は、この複素環化合物の生成において最も新しく有効な方法なのである。今日、様々なビアリールやヘテロビアリールを合成するのには、パラジウム触媒による結合が用いられる。複素環化合物の合成にパラジウム化学が用いられる例は、飛躍的に伸びている。 このような進展の中、複素環化合物生成におけるパラジウム化学について専門的に書かれた研究論文の必要性は、明らかである。本書は、この論点において、分かりやすい解説を提供する1冊となっている。本書の主なねらいは、個々の複素環化合物特有の特徴をかんがみた、複素環化合物のパラジウムを介した重要な諸反応を明らかにすることである。 1. 複素環化合物生成の為のパラジウム化学反応は、対応する炭素環式アリール化合物とは異なるそれぞれの構造上の特質から生じる「特異性」を持つ。活性化されたクロロ複素環化合物でさえ、パラジウム触媒に非常に良く反応する。ハロゲン化へテロアリールの活性化の結果、パラジウム触媒による化学反応は、活性化されたポジションで位置選択的に起こりうる。この現象は、炭素環式ハロゲン化アリールではほとんどみられない。付け加えてもう一つ、複素環化合物のパラジウム化学反応において顕著な特性をあげるならば、いわゆる「ヘテロアリール ヘック反応」である。例えば、炭素環式アレーンの分子間のパラジウム触媒によるアリール化は、稀であるのに対して、アゾールのパラジウム触媒によるアリール化は、極めて容易に行われる。というわけで、本書の主なねらいは、個々の複素環化合物特有の特徴をかんがみた、複素環化合物のパラジウムを介した重要な諸反応を明らかにすることなのである。 2.数えきれない程多くの複素環化合物が生物学的に活性しているということは、医学や農芸学の化学者にとって,決定的な重要性をもつ。多くの複素環化合物を含有する天然物(これらは、全文を通じて、囲みで強調されている)の存在は学界や産業界の様々な研究グループの間で大きな関心を引き起こした。アレーンとヘテロアレーンのパラジウム化学反応の類似性をかんがみて、複素環化合物化学における諸成果についての臨界検査を熟読することは、多くの読者がこの急速に進展している分野のスピードについていくことを可能にするだろう。また、この極めて有用な分野に対する更なる関心や、新しい着想を本書で喚起できればと考えている。 本書ではまた、複素環化合物のためのハロゲン化ヘテロアリールやボラン、スタンナンの重要な調合についてのまとめも収録している。物質化学におけるパラジウムを介した複素環化合物のポリメリゼーション(重合)についての多数のデータについては、本書では特に焦点を合わせていない。パラジウムと複素環化合物をともなう錯体化学も同様である。 ・この急速に進展している分野での最新情報を網羅。
・3つの章を新たに追加。
・複素環化合物化学における評価の高い選び抜かれた執筆者による資料を収録。